優夢座

■事業開始/1999年 ■対象年齢/60歳以上 ■団員数/15名(2009年度)

2009年度の座名は、「元気座」。演目は『いってらっしゃい 気をつけて』(高橋純作)2009年11月13日(金)岩手県西和賀町で、盛岡市の「60歳からの芝居づくり」との合同公演 関連記事
優夢座

過疎地に生きる高齢者の世界観を描く

 岩手県西和賀町の文化行政と社会福祉協議会(以下、社協)が、北上市、秋田県横手市と協働して1999年より実施している「高齢者演劇ネットワーク事業」(現・みちのく高齢者劇団交流事業)。毎年、各市町から高齢者を募集し、劇団を新たに結成するという全国でも珍しい取り組みで、長年にわたり高齢者の「生きがいづくり」や「地域間交流」に貢献してきた。近年は、過疎地に生きる高齢者の世界観を描いたオリジナルの戯曲を地域色豊かに表現し、大都市では真似ることのできない、価値ある作品づくりにも成功している。さらに、2007年度は、盛岡市や青森県の高齢者劇団を迎え「みちのく高齢者演劇サミット合同公演」を開催するなど他の高齢者劇団とのつながりもできつつある。

 劇団は、毎年8月末頃に結成。11月中頃より3市町を巡演し12月に解散する。参加者の固定化を防ぐため原則として、1度参加したら以後3年間は出られない。ただし、2007年度に結成された8代目の「優夢座(ゆうめいざ)」の場合は、「東京公演を実現させたい」という想いが強かった前年度のメンバーを中心に結集されており、昨年12月には、その悲願を果たすことができた。

 

「お国言葉」をぜいたくに用いて

 稽古は、西和賀町の演劇専用施設「銀河ホール」(約300席)で週に2〜3回(1回2時間)、3カ月間に約20回。青森市にある劇団「支木」の演出家・中野健さんが、西和賀町中学校演劇の演出も兼ね、長期滞在して指導にあたっている。

 演出でもっとも重要なのは「お国言葉」を使うこと。岩手と秋田をつなぐ国道107号線沿いに連なる3市町は、隣接しているとはいえ、山越えを要する立地のため、それぞれに言葉が異なる。そこで、気持ちを表現しやすい言い回しに、団員自身がそれぞれ書き換える。東北地方以外の者からすれば「東北弁」とひと括りにしてしまいそうだが、「方言を聞けただけでも十分に価値がある」という感想も寄せられるほど、高齢者が話す昔ながらの言葉は貴重で、地域に暮らす人たちの心のヒダに入り込む。

 もうひとつのポイントは、団員同士の「アンサンブル」だ。何より、団員が気持ちよく演じ、団員同士の人間関係がうまく築かれていることが、本番の舞台に大きく影響する。そのため、結成時より、行政や社協の担当者は、団員の負担を最小限にとどめ、演劇を楽しめる環境をつくっていく。10分間の休憩では、それぞれに持ち寄った自慢の漬物や惣菜を広げ、「こうしたらよかべ」とお茶を飲みながらダメ出ししあう。また、年度によっては、公演前までに懇親会を設け、得意の歌や踊りを披露しあい互いの絆を深めるのである。

横手市の劇作家・高橋純・作『オールドボーイズがやってきた・山に幸あり〜唄う直売所〜』。高齢者が一番イキイキとしている「産地直売所」が舞台。

 

2007年11月には「みちのく高齢者演劇サミット」が行われ3つの高齢者劇団が合同で公演。

 

会場をひとつにする高齢者の存在感

 「よし、やるべ」。団員の気持ちが一致した状態で開演。幕が開き、舞台に立つ喜びを満面に表した高齢の役者が登場する。それだけで会場全体に、拍手が沸き、ぱあっと明るくなる。これに、太鼓に民謡、沢内甚句など、地元の歌や踊りが加わり、いつのまにか演者も観客も一緒に楽しんでいる。ある年には「入れ歯が外れハモニカが吹けない」、「三味線がならない」などのアクシデントがあったが、即座に、団員が口歌で助け、続けて会場からは一層大きくなった手拍子が聞こえてきた。プロでも難しい「観客と一緒に創る芝居」を難なく実現させてしまうのが、はつらつ堂々と演じる高齢者の力である。

 2007年12月、吉祥寺・前進座劇場での東京公演には、都内にすむ地元出身者もかけつけ、懐かしい地元の言葉に会場は終始笑顔が絶えなかった。「また、来てくれよ」の声も飛ぶ。大きな目標を達成し、地元へ帰る高齢者は「やればできるもんだべ」「前進座の舞台もいいが、おらほの(うちの)銀河ホールが最高!」など、名残を惜しみながら、口々に喜びを語っていた。

 

 

■ これまでの上演作品

1999年 『二十二夜待ち』(作:宮沢賢治、演出:中野健)

劇団名:ゆうゆう座
2000年 『植物医師』(作:宮沢賢治、演出:中野健),劇団名:よつば座 

2001年 『雪渡り』(作:宮沢賢治、演出:中野健),劇団名:雪渡りの一座
2002年 『瓜子姫とアマンジャク』(作:木下順二、演出:中野健)

劇団名:喜楽良座
2003年 『むか〜し、むかしの桃太郎』(作・演出:中野健)

劇団名:ほのぼの座
2004年 『かっけんころころ雉の声』(作:川村光夫、演出・中野健)

劇団名:あさひ座
2006年 『歌入り芝居 沢のカラさわぎ』(作:高橋豊平、演出・中野健) 劇団名:座・さんらいず
2007年 『オールドボーイズがやってきた・山に幸あり〜唄う直売所〜』(作:、演出・中野健) 劇団名:優夢座
2008年 『おゆき』(作・篠崎淳之介、演出・中野健)劇団名:ゆきんこ座 2009年 『いってらしゃい、気をつけて』(作・高橋純、演出・中野健)劇団名:元気座 予定

ハモニカ、バイオリン、沢内甚句、芸達者な高齢者のパフォーマンスに会場は大いに盛り上がる。