シルバーパンサー

■発足/2000年5月 ■対象年齢/60歳以上 ■団員数/15名(2008年11月現在)

次回公演『したきり雀』(仮)(作:ゆき乃しずく、演出:堤穂瑞、振付:氷室敬子、監修:東是信)は、2009年は9月頃を予定
シルバーパンサー

 

高齢者の「元気印」として地域に定着

 福岡市高齢者市民劇団「シルバーパンサー」は、2000年に発足したが、旗揚げ公演までに悲しいドラマがあった。発起人である故・白水良實さん(当時64歳)が舞台に立つことなく、急逝したのである。劇団を結成する前、「博多区民創作ミュージカル」劇団(1994年より博多区の事業として結成)に参加していた白水さんが、解散後、「区民ミュージカルでは、シニアの出番はほんの少し。これからは“シニア全員が主役”の劇団をつくりたい」と考えたのが始まりだった。同ミュージカルで親交のあった、宗みどりさん(脚本家)、東是信さん(演出家)、氷室敬子さん(振付家)に指導を依頼し、また、当時主宰していた社交ダンスの仲間や民俗芸能団体の仲間に入団を呼びかけて、シルバーパンサーが誕生したのである。白水さんの無念を想うと団員は稽古どころではなかったが、現団長の藤光和一さん(80歳)を中心に、遺志を汲む形で初公演を行い、大成功をおさめた。「必死だったからこそ、絆が深まった」と藤光さんは振り返る。
  以後、市民センターの大ホール等で行う年1回の定期公演を柱に「博多どんたく」など地元の祭りへの参加、老健センターでのボランティア公演など、市内のあちこちで高齢者の「元気」をアピール。その勢いは、マスコミにも注目され、地域に広く知られるようになった。
 シルバーパンサーは、公演の度に、福岡市や福岡市文化芸術財団の後援を受けているため、稽古場や公演会場は無料で利用できる。しかし、運営は、劇団主体で、演出家等は技術面を支援するのみ。パンフレットの制作・広告営業、チケット販売、日常の運営業務等は、藤光団長を中心に、団員が分担して行う。2005年、2006年の公演には、企業のスポンサーがつき、通常の観劇料は1200円だが、入場無料での開催を実現した。シニア主体の劇団ゆえに、意見が割れることもあるが、話し合いの場を持ち、乗り越えてきた。来年2009年は10年目に入る。

 

舞台でドキドキすることが一番大切

 稽古は、市内の公民館で週1回、約2時間。公演のひと月前頃より週2回、公演間近は、ほぼ連日行われている。指導は現在、前出の氷室敬子さん(振付家・PACエクササイズ代表)と東是信さん(監修)、そして2006年より東さんから演出を引き継いだ劇団テアトルハカタ所属俳優・堤瑞穂さんが加わり、3人が協力して行っている。
  メンバーには、日舞、社交ダンス、手話ダンス、コンテンポラリーダンス、安来節など、劇団活動を始める前から、踊りを学んでいる人が多い。それだけに「腹筋は毎日欠かさない(絹子さん)」など身体づくりの大切さを知り、努力を続けている人が多い。
  氷室さんは「ダンスはバランス感覚が養われ、振りを覚えるのは記憶力が鍛えられ、音楽やリズムも刺激になるので健康にいいんです」とミュージカルの効用について強調する。ただし、「100回踊ったような顔をして舞台に立ってはだめ。毎回、緊張感を持つ、ドキドキすることが一番大切」と前出の「博多区民ミュージカル」以来、劇団をみてきただけに、陥りやすい“慣れ”を指摘する。
  「芝居は、やはり実体験が一番強い。場面やセリフの意味を理解して感情がついていきさえすれば、年齢の高い人の方が、プラスアルファがあります」というのは堤瑞穂さん。立ち稽古でも、場面における登場人物の気持について、十分にコミュニケーションを図っている。そのうち、セリフの棒読みだった団員も、自然に役に入っていくそうだ

しなやかな動き。可愛い!シニアになっても、アイドルはアイドルであることを証明してくれる!

 

 

ミュージカル中心にやってきた劇団だけに、日本舞踊もモダンダンスもお手のもの。

 

コミカルな創作ミュージカルで笑いの渦に

 作品の基本路線は「創作ミュージカル」だが、その中にも、歌やダンス中心、芝居中心、コメディ中心などバリエーションがある。
  初期は、当時72歳の団長が舞台の上で腕立て伏せを披露したり、劇団員全員が水着でシンクロナイズドスイミングをやったり、全身で挑む団員の姿に、会場は手拍子や拍手で大盛況。テレビ番組への出演依頼もあったくらいだ。旗揚げ時より数年間、アイデアを出して東さんは、シニア演劇のポイントについて「高齢者がそのまま”老い”を表現しても面白くありません。シルバーとしての”若さ”をいかに出すかが肝心」と話す。
  一番のヒット作は2004年の初演『旅ゆけば−冥界アドベンチャーツアー』。未知の冥界への下見ツアーに高齢者が参加するというユニークなストーリーで話題を集めた。2005年にはスポンサー付で再演。「『あの世なんて縁起でもない』と拒否反応も出ましたが、本を読んだら面白くて。第3弾がやれたらな(やよいさん)」と団員も好評だったようだ。このほか、2007年度『金色夜叉騒曲』では、シリアスな演技にも挑戦し、観客を驚かせた。今夏2008年度は『ドリームタウンへようこそ』では、平成元年からのヒットソングをからめたミュージカルなど。どの作品でも最後は、シルクハットとタキシードに着替え、メンバー全員で劇団のテーマソングを踊る。「私たちをみて欲しい」と主張するような、はつらつとした姿は、とても平均年齢が68.9歳とは思えない。

 

<シルバーパンサーのテーマソング>

我らシルバーパンサーお出ましさ
戦前、戦中、高度成長と、
世界を支えたツワモノぞろい
ご勇退で悠々暮らし 隠居生活楽しむ筈が
バブルはじけて あぶれもの
介護保険もいいけれど 何かが違う 違うんだ!
われらが目指した日本は 心ゆたかな人間社会
だから 今こそシルバーパンサー お出ましさ
隠居なんかクソくらえ!灰になるまで闘うぞ
よく学び、よく遊び、よく食べ、よく眠る
夫婦は互いに尊敬し、愛し合う
親子は愛と信頼で結ばれ
政治家はウソをつかず 国民のために働く・・・
シルバーパンサーは 華麗に立ち上がる

 

■これまでの上演作品
2001年 第1回 創作ミュージュカル 珍説『浦島太郎・かぐや姫伝説』(作:宗みどり、演出:東是信、振付:氷室敬子)
2003年 第2回 創作ミュージュカル珍説『桃太郎伝説』(作:宗みどり、演出:東是信、振付:氷室敬子)
2004年 第3回 創作ミュージュカル『旅ゆけば・・・シルバー珍道中』(作:宗みどり、演出:東是信、振付:氷室敬子)
2005年 第4回 創作ミュージュカル『旅ゆけば・・・冥界アドベンチャーツアー』(作:宗みどり、演出:東是信、振付:氷室敬子)
2006年 第5回 創作ミュージュカル『めおと地蔵』(原作:宗みどり、作・振付:氷室敬子、演出:堤穂瑞、監修:東是信)
2007年 第6回 創作ミュージュカル『金色夜叉騒曲』(原作:尾崎紅葉、作:ゆき乃しずく、演出:堤穂瑞、振付:氷室敬子、監修:東是信)
2008年 第7回公演 創作ミュージュカル『ドリームタウンへようこそ!』(作:ゆき乃しずく、演出:堤穂瑞、振付:氷室敬子、監修:東是信)

中央が最高齢の団長・藤光和一さん(80歳)。『ドリームタウンへようこそ!』では、元ダンサーの町内会長を演じた。