
■発足/1999年1月 ■対象年齢/おおむね60歳以上 ■参加者数/17名(2007年度)


10周年を迎える「60歳からの芝居づくり」
「60歳からの芝居づくり」は、(財)盛岡市文化振興事業団主催「もりげき演劇アカデミー」が、演劇を幅広い年代層に楽しんでもらうおうと1998年から始めた演劇講座。「町内会の催しで演劇をやりたい」と町内会の年配の方から講師の一人が相談を受けたことが講座発足のきっかけだった。当初は、作品づくりよりも、「声を出す」、「身体を動かす」、「コミュニケーションができる」、「仲間ができる」などの演劇の特性は、シニア世代の健康にもいいだろう、とスタート。したがって、最初の4年間は、本格的な発表会はなく、年に4〜8回のレクチャーと簡単なワークショップのみだった。
発表会を実施したのは2002年から。60歳以上、しかも初心者ばかりの受講生が果たして舞台をやりとげることができるのか関係者の間では心配されたが、公演では、地元の劇作家・藤原正教さんが、書き下ろした『記念写真』(演出・勝山智也)を力一杯に演じ切り、盛岡劇場のタウンホール(100席)は、立ち見が出るほどの盛況。会場は、大きな拍手に沸いた。以来、講座は「1作品を創り上演する」スタイルで定着し、しだいに、1ステージから2ステージへ、2006年からは、500席のメインホールとレベルアップした。2007年度には、東北の他劇団との合同公演を実現している。
物語上の人間関係を徹底的に理解する
稽古回数は、おおよそ18〜20回。休憩含め2時間半。発声練習やストレッチや身体を使う簡単なゲームなどで心身をほぐし、初対面の人とのコミュニケーションをつくっていく基礎練習が約1カ月。その後、台本を渡され「本読み」に入る。演出は、岩手県演劇協会副会長で「盛岡文士劇」や市民劇団の演出・演技指導なども手がける浅沼久さんである。
演じる時に大切なのが「台本や登場人物の理解」。一つの芝居をつくるためには、受講生に共通理解が得られなければならない。2007年度の『まっ赤かっか空の雲』(作・藤原正教)の場合は、親子関係、愛人関係、会社の上司と部下、学生時代など人間関係がやや複雑であった。戦時中の過去を思い出すシーンでは、戦争がどのような状態だったのか、時代背景の理解も必要となってくる。そこで、登場人物の性格や立場、時代背景、また、物語の文脈の中でそのセリフが出る背景や想いについて、各受講生に考えてきてもらい、ホワイトボードなどに書いて、徹底したディスカッションを行うなど時間をかけている。


自分たちの劇団をつくろう
「60歳からの芝居づくり」では、継続しての受講も可能であるため、長い人では5年続けている。受講生へ芝居の面白さが伝わっていくのは、演技指導力もさることながら、「笑いが絶えない」雰囲気づくりの一方で、「動け、動け、たちっぱなしはダメだ。次の芝居につながる位置や相手の動きを考えて動け!」と、時には、舞台をはだしで飛び回る芝居に対する浅沼さんの情熱が自ずと伝わるからであろう。受講生の有志で2002年に結成された演劇同好会『虹』は、現在、年1回の公演を行っている。
演劇とは、俳優だけでなく、技術スタッフ等、様々な人達の共同作業で成立している。もりげき演劇アカデミーでは、シニアに限らないが、演劇の総体的な理解と、自分たちで自立して劇団活動が続けられるノウハウを学べるように、短期間で表現や共同作業を体験する「演劇ワークショップ」、舞台美術・音響・照明など「スタッフ体験講座」、3〜4カ月かけて1本の作品を創り、実際の舞台公演まで行うなど芝居作りの過程を学ぶ「演劇基礎講座」などを開催している。演劇製作や劇団発足の相談・サポートも行っている。
■これまでの上演作品
2002年、2004年『記念写真』(作・藤原正教、演出・勝山智也)
2003年、2006年『電話デネ』(作・藤原正教、演出・勝山智也(2003)、
浅沼久(2006))
2005年 『カレーライスができるまで』(作・藤原正教、演出・浅沼久)
2007年 『まっ赤かっか空の雲』(作・藤原正教、演出・浅沼久)
2008年 『レオーノキュースト失踪事件』(原作:宮沢賢治、脚色:藤原正教、演出・浅沼久)
2009年『私を劇場に連れてって』(作・藤原正教、演出・浅沼久)
2010年『寺子屋』(作・遠藤雄史、演出・浅沼久)

