かんじゅく座

■発足/2006年9月 ■対象年齢/60歳以上(アマチュア) ■団員数/40名 (2009年6月現在)

月謝:7000円〜15000円(稽古回数、年齢により異なる)、 稽古:火曜、水曜、金曜の午前、その他に木曜日13時より朗読チームの稽古有り 。稽古場は西新宿の「芸能花伝舎」(丸の内線「西新宿」駅から徒歩7分) 5月から11月までは途中からの入会可能。お問合せ:090-8083-6888 かんじゅく座HP

青春時代に戻ったみたい!

 舞台を中心にプロデュースする女優・劇作家・演出家の鯨エマさんとその演劇仲間が、若者に人気のある「小劇場演劇の楽しみを中高年にも味わって欲しい」という想いで、2006年に立ち上げた「かんじゅく座」。入団条件は、60歳以上の「素人」。男女14人(2006年度の団員)が集まり、同年9月より稽古がスタートした。
 2007年3月の初公演『赤い川の谷間』(作:かんじゅく座、脚・演:鯨エマ)は、裁判員制度の体験講座に参加した熟年男女が架空の事件を審理するうちに、自分たちの家庭の事情の激白へと脱線していくコメディ。脚本には、団員の「体験談」が生かされた。未経験者ばかりだったが、公演は大成功に終わった。打ち上げで、ある男性座員から「『もう一度、青春時代の感覚を取り戻せた。ありがとう』といわれました。スタッフもみな満足し、心からやってよかったと思います」と鯨さん。
 今年4月の第2回公演『さくら』には、高校の演劇部を舞台に、友情、恋愛など甘酸っぱい青春が中心に描かれているが、それが60歳を越えピュアな気持ちで演劇に打ち込む今の団員の姿と重なり、戻らない「時」、今ここにある「時」への愛おしさを一層つのらせる、深みのある作品となった。

 かんじゅく座は、こうした劇場公演のほか、秋には朗読劇、依頼に応じて福祉施設への出張公演も行い、活動範囲を広げている。

 

親子のような歳の差がいい

 稽古は、新宿・芸能花伝舎の一室で週2回(1回:1時間45分)。団員たちは、時間的負担も、持病や家庭の事情も忘れ、嬉々とした表情で稽古場にやってくる。

 稽古で最も時間をかけるのが、戯曲についてのディスカッション。30代の鯨さんと60代の団員たちは、親子ほどの年齢差があるため、戯曲の解釈にズレが生じることもある。そんなときは、「この役は母親と月に何回ぐらい会うのか、どれぐらい会話があったのか、母親のどこが気に入らないのかとか、もう少し内面を考えてみてください」。鯨さんは、登場人物について、細かく質問し、セリフをいう時の心情を団員自らが理解できるように導いていく。対話しながら、一緒に創っていくことをお互いに楽しんでいるのが伺えた。2年目の劇団員は「昨年は恐いもの知らずで、戯曲の解釈をこうだと主張していましたが、今思うと恥ずかしい」(エミリさん)、「エマ先生の芝居作りの感性はとても新鮮」(マリさん)と話す。
 また、鯨さんの演技指導に加え、月に4回、3名の講師(岡田由紀子さん、佐野美幸さん、ふるたこうこさん)が交替で歌や身体表現、音楽などを取り入れた授業を担当している。ふるたこうこさんの授業には、2班に分かれ、劇作・演出から上演までを自分たちだけで創り、発表し合うという課題もあった。このほか、スタッフワークなども学び、年数回、ベテラン俳優らを招く特別講座も開催。受講料は、月に1万8000円だが、演劇を多面的に楽しめる充実したカリキュラムとなっている。

鯨エマさん(左)をはじめ、4名の講師は皆30代の女性。岡田由紀子さん(中)、佐野美幸さん(右)

 

「こっぴどく叱られるのは何十年ぶりか。エマさんのダメ出しがある限り若々しくいられる」と話す、元高校教師のテツトシさん。

 

旗揚げ公演までの道程を映像で

 

 第2回公演の最終日には、かんじゅく座、旗揚げ公演までのドキュメンタリー映像『つぶより花舞台』が上映された。そこには、様々なバックグラウンドを持つ「演劇をやるとは思わなかった」人たちが演じることの喜びと苦悩を率直に語っている。家族の見守り、仲間の励ましの中で、それぞれのハードルを越えていく様子が、愛情をもって描かれていた。
 「人間って怠け者だから楽な方にいってしまいがち。自分に負荷をかけながら楽しんでやっていきたい」(こんちゃん)、「いいたいこともにいえず、これまで周りの人がいってくれていたけれど、黙っていてわかってもらうのでなく、言葉にしなければならないことをお芝居をつくる過程で学んだ」(トトロさん)。

 3年目を迎え、演劇を引き寄せ、自分のものにしていくたくましい団員たち。シニア演劇は、公演という結果だけではなく過程がまさにドラマであり、そこにも多くの価値があることが改めて感じさせられる。

 「かんじゅく座を立ち上げるまで、この世代の人たちの生活は、悠々自適なものだと思い込んでいました。でも、何かを乗り越えてきた人、その渦中で今も右往左往している人たちもいる。人間って幾つになっても大変なんだなとじみじみと感じます。そんな経験を引き出して、一人ひとりを舞台の上で”おいしく”魅せるのが私のつとめ。そこには、200%力を注ぎます」(鯨エマさん)

 「ダメ出しが楽しみ」と口をそろえる団員の期待に、今年もしっかり応えてくれそうだ。

 

 

■これまでの上演作品
2007年 『赤い川の谷間』(作:かんじゅく座、脚・演:鯨エマ)
2007年 10月朗読劇「おこんじょうるり」(作:さねとうあきら、

演出:鯨エマ)
2008年 『さくら』(作・演:鯨エマ)
2009年 『酒と涙とオジンとオバン』(作・演:鯨エマ)

2010年『さくら2010』『方舟、飛沫をあげて』(作・演:鯨エマ)

高校生も、ホームレスも見事に演じるマサコさん。新しい役で、仲間の意外な一面を発見するのも楽しみ。

 

第2回公演『さくら』は、団員のセーラー服のシーンも見所。シンプルな舞台ゆえに、役者の存在感が際立つ。