かんじゅく座

■発足/2007年9月 ■対象年齢/50歳以上 ■団員数/月組12名、水組15名(2008年5月現在)

現在、下記の「細見クラス(星組)」と「平岡クラス(水組)」の計2クラスに。

詳しくは、シニア劇団ブログへ

参加動機により2つのクラスを設置

 

 京都市左京区、下鴨神社北にある小劇場「アトリエ劇研」。無名の優れた劇団を発掘し、多くのアーティストを輩出した「アートスペース無門館」が96年に改称した劇場で、京都の小劇場の草分け的存在である。2003 年にこの劇場を運営する有志が法人格を取得し、劇場の運営および舞台芸術の振興、人材育成、国際交流など幅広く事業を展開している。

 「アトリエ劇研シニア劇団」は、2007年、人生経験を生かしたシニア世代の役者を育成し、厚みのある作品づく りを行うことにより、舞台芸術の素晴しさを広め、演劇界全体を豊かにしていくことを目的に結成された。発足にあたって、10数年前より、社会人向けの演劇講座を企画・制作していたプロデューサー・杉山準さんは、制作者側のイメージを先に提示するのでなく、集まった人たちの多様な個性や要望をできるだけ活かしたいと考えた。そこで、説明会でのアンケート等で、参加者の芝居の趣向、演劇への想い入れ等を把握した上で、参加動機に合わせ「芸術的に優れた作品の創作を目指したい」月組と「表現を楽しむことを重視する」水組、2つのクラスを設置した。最初の1カ月は「お試し期間」で同時受講も可能。2カ月目より、参加者が望むクラスを選択するようになっている。
  いずれのクラスも、演技指導(トレーナー)に、「演出家」でなく「俳優」を選んでいるのにもこだわりがある。

 「演出家の場合は、いい作品をつくることに重点がおかれます。それよりも、俳優のメンタルな部分に理解があり、 感情を引き出すプロセスなど技術的な部分をうまく伝えられる俳優の方が、未経験者も多いシニア劇団の場合は、ふさわしいと考えました」

 

アメリカのメソッドで合理的に演技の本質へ

 

 「芸術的に優れた作品の創作を目指したい」月組の演技指導を担当するのは、俳優の村上弘子さん。マーロン・ブランド、アル・パチーノなどの名優を数多く輩出しているニューヨークの「アクターズ・スタジオ」で、同スタジオが採用するリー・ストラスバーグの「メソッド演技法」を10数年学んでいる。
 「演技しようとする人に立ちはだかる壁は、どこの国も同じです。できるだけストレスを少なくしながら、合理的に、演技の本質に迫るのがこの方法」と村上さん。 
 トレーニングは、まず、リラクゼーションで心と身体を十分に開放することから始まる。「ベンチで日向ぼっこをする」など与えられたシチュエーションをそれぞれが想像し、日頃は、無意識である身体の感覚を意識して呼び覚ましながら、そのフィーリングを身体で表現。テキストを使った練習では、過去の記憶を引き出し、感情を想起させる「センス・メモリー・エクササイズ」とい手法で、リアルな表現を導き出す。

 日本方式は、言葉が中心で「セリフを一字一句正確に覚える」ことが求められる場合が多いが、村上さんの指導は、演技者が「生き生きと舞台で存在している」ことが中心。

 「覚えることはもちろん大切。ただ、そこに執着しすぎると、自由な演技の妨げになることもあります。完璧に台本どおりである必要はなく、即興で動くのもいいと思います」
2008年3月の初公演『頭取閣下と記念祭』(作・チェーホフ)では、プロの俳優も交えたが、こうしたメソッドの効果が生かされたのか、演技未経験の俳優ものびのびとした演技を披露し、観客とともに芝居の楽しさを共有することができた。

 


 

俳優の想像力を最大限に活かした演技の方法を採用。「内面からこみ上げてくるもので身体を動かすやり方は抜群」という団員も。

 

チェーホフの短編『頭取閣下と記念祭』は笑いながら楽しめる作品。当時のオーバーアクションをどうするかに苦労した。

 

若さと老いの狭間でゆれる想いを舞台に

 

 「表現を楽しむことを重視する」水組(現・星組)では、全員が演劇未経験者であることを活かし、既存の脚本を用いて役を演じるのではなく、「自分たちの表現」をゼロから模索した。指導は、これまで学生、高齢者、障がい者など、様々な人たちを対象としたワークショップ経験のある俳優・細見佳代さんだ。
 稽古では、好きな詩を選び、即興的に身体で表現してみたり、簡単な対話をもとに前後のストーリーを考え「一人一演出」で小さな作品をつくってみるなど、創造的な体験を重ねていく。
 一方で、細見さんが、受講の動機、幼い頃に傷ついた経験、恋愛、家族との関係、今の想い、死などについて、一対一で丁寧に尋ねる。その質問に答えながら、自分と向き合い、自分を解放していった。

 「過去を語ることは、つらい時もあるけれど、それを打破したい(ミチコさん)」。シニア受講生にとって、初めて経験した演劇は、自身の過去と未来をかけた「挑戦」でもあった。
 「『人生を見直したい』という動機で演劇を始めることに驚きました」と細見さん。話を聞いていく中で、「若さと老いの狭間で揺れ動き、葛藤していることがこの世代の特徴。その葛藤状態を創ることができれば、皆さんの魅力が一番表現できると考えました」
 初公演の作品『FACE』(作:アトリエ劇研水組、構成・演出:細見佳代)は、この1年間、稽古場でつくってきたモチーフで構成。過去を振り返る『結局、人生何だったと思う?』、死を意識し残り時間をどう生きるか考える『で、それから』など、いずれもシリアスな問いかけだが、12人の解放された声と身体は、客席でみている同世代の不安を打ち消すかのように、堂々と、力強く応えていく。
 「何にもないけど『何にもない』がある」。
人生の折り返し地点で、演劇に出会い、新たに「まっさらな自由」を手に入れた役者たちによる、清々しい舞台となった。

 

 

 

 

■これまでの上演作品
2008年 

・月組第1回公演『頭取閣下と記念祭』(作・チェーホフ、構成・演出・村上弘子)

・水組第1回公演『FACES』(作・構成・演出・細見佳代)


初公演の『FACES』。タイトルには、生き様が刻まれた自分の顔を見直すという意味がある。


 

稽古はじめには、十分にストレッチの時間をとる。動きの多いシーンもなめらかだ。