かんじゅく座

■発足/2001年4月 ■対象年齢/50〜70代 ■受講生数/29名(2008年4月現在)

毎年4月開講。メンバー募集中。見学可能(事前連絡要)
稽古場は、JR西宮駅前・フレンテ西館207号 
問い合わせ:劇団ふぉるむTEL/FAX0798-33-9070  劇団ふぉるむHP

人生のキャリアを生かせる場として

 「演劇・567(ころな)倶楽部」は、地元で40年の活動歴を持つ「劇団ふぉるむ」内の演劇教室の一つで、その名の通り50、60、70代を対象にしたクラスである。ちなみに、演劇教室には、他に18〜50歳対象の「演劇・月曜/金曜倶楽部」、中高生対象の「演劇・17(セブンティーン)くらぶ」があり、いずれもJR西宮駅前のフレンテ西館にある「劇団ふぉるむスタジオ」を稽古場としている。
  同倶楽部を立ち上げたのは、「劇団ふぉるむ」の演出を長年手がけてきた小林哲郎さん、63歳。「中高年に人生のキャリアを生かせる場を提供する社会貢献の一つ」と考え、定年退職する5年前の2001年にスタートした。
  小林さんは、大手広告代理店に勤務し、60歳で定年退職するまでの約40年間、演劇との二足のわらじを履いてきた。567倶楽部の開講の背景には、こうした自らの経験がある。
  「退職すれば、会社の肩書きは何の意味もない。だから仕事一筋でやってきた人は、生きがいをなくしてしまう。でも、僕には演劇がある。劇団を続けていくのは、決して容易ではなかったけれど、演劇という表現の場を持ち続けてきてよかった。同世代の人たちにも、表現活動の面白味をぜひ味わって欲しい」
  567倶楽部は7年目に入り、現在3クラスが活動中(1クラス5〜11人)。同じメンバーで継続し、7年目に入ったクラスもある。需要に応じて自然に継続していくクラスも出てきている。これから始める人が想いの強さや経験などに応じて選択できるくらい、幅が広がってきた。

 

まずは「伝わる演劇」を目指す

 稽古は、多忙な同世代の生活に配慮し、月2回、1回2時間という無理のないスケジュールで行われている。「仕事のある人、家族の介護が必要な人、他の習い事で忙しい人も、月2回なら夢中になれるはず」と小林さん。毎年4月に開始され、4〜6月が柔軟体操、発声訓練、早口言葉などの基礎レッスン。翌年3月初旬に行われる劇団内部発表会に向けての稽古は、その約2カ月前から。回数は、週1回と増え、1回の時間も3時間を超える。
  稽古で最も重要視しているのは、発声と本読み(台本を読む)。

「観客に伝わらなくては意味がない。それに、人間が最後に衰えるのは声だといわれますから、発声練習は、やって損はありません。また初心者なら、本読みは、「、」「。」で止まらないようにするだけで3カ月かかるし、慣れない会話形式の戯曲から意味を読み取ることも難しいもの。基礎をしっかり学ぶ必要があります」。セリフを頭にいれ、伝わる言葉で話せるようになってから、それぞれが役柄のイメージをふくらませ、舞台での「関係性」をつくっていく。
  3年目に入るクラスの受講生に感想を伺った。言葉に関心があり、表現活動を深めたいという人が思いのほか多い。
  「朗読はやっていたけれど、身体が解放されていなかった。稽古を初めて、気持ちを身体で表現する方法が少しずつわかってきた」(かずこさん)、「小学校などで子どもたちを相手にストーリーテリングを20年やってきて、一人でなく共同でやることを経験したいと思い受講しました。確かに、思い通りにはならないけれど、皆でやることはそれに代え難い価値を感じています」(ようこさん)
 

夫婦のからみのシーンに「やっぱり照れますね」とみやたさんは70代。思わず吹き出す、ようこさん。稽古場は笑いが絶えない。

 

発表会まで2ヵ月。物語の流れの中で舞台上の位置関係を確認していく。演出家・小林さんの大きな渋い声が稽古場に響く。

 

アマチュア演劇を大切にしたい

 「1年経てばずいぶん変わる」と小林さんは言う。個性の出し方、身体解放の仕方、皆、役を演じることで変わっていくようだ。受講生自身も、その変化を歓迎している。
  「話し方に抑揚がないといわれて演劇を始めましたが、最近は、家族や友人との会話の中で、自分の気持を表したりすることも楽しくなった」(かずこさん)、「自分の時間ができるようになり、憧れていた演劇にチャレンジしました。3年経った今、人生経験を生かして、いろんな役をやってみたいと欲が出てきました」(ふみこさん)。
  演出家にも気づきがあった。
  「この世代の人たちは、どうしゃべってもウソっぽくならないことに驚いた。うまくはないれけど、声にもしぐさにも、人生がのっている。人生のキャリアは、教えて身に付くものではありません。自分が培ってきたことで勝負する。自分の身体が武器になる芸術。その辺が、音楽などと違う、演劇の面白さだと思います」
  年に1回、2日間にわたって内部発表会「レッスン・ステージ」が行われる。演目は、各クラスの個性や人数に合わせて現代の戯曲の中から選ばれる。初心者の場合は、誰もが楽しめるように、わかりやすいメルヘンタッチのものにしたりするなど、家族や知り合いとの交流も意識した舞台である。
  「55歳からプロの俳優になるという考え方もありますが、期待しない方がいい。それよりも、自己表現手段のひとつとして楽しみながら、生活やこれからの人生に活用していくこと方がよっぽど有意義だと思う。利益目的でない表現活動を皆それぞれ持つことができたら、世の中はモット変わるんじゃないかな」
  今こそ、アマチュア演劇が社会に果たす役割が問われているのかもしれない。

どんな役もそれなりに様になるのは、シニア役者の特権?

 

コミカルな表情が魅力的。小林さんとのシーンでも息の合った演技をみせる。